玄関は室内の第一印象
「三角狭小敷地の家」の設計 ④
住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「三角狭小敷地の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第4回です。
建物の外観は周囲の環境も考慮したデザインとなるのに対して、室内は完全にプライベートな空間です。とりわけ玄関は建物に入る最初の部屋で、「室内の第一印象」となるので、建てる人や会社をよく表す空間となるように心がけて設計しています。
「三角狭小敷地の家」のお施主様ご夫婦は美術館学芸員でいらしたので、玄関も美術館展示室のような空間を提案しました。土間も含めて5畳ほどの大きさで、一般的な分譲住宅の玄関と変わらない広さですが、塗装壁と特注製作の収納家具やガラスの飾り棚で「展示室のような非日常性」を演出しました。奥の収納家具の上にあるのは旦那様ご所有のマルセル・デュシャン作品レプリカで、ガラス棚に飾ってあるのはご夫婦が担当された展覧会のカタログです。
初めて家に来られた方は、皆さん玄関に入られると驚かれるそうです。ガラス棚のカタログをご覧になったり、収納家具の上の作品についてお話をされてから、濃緑色の壁の中央奥にある階段を上がって、2階のリビングへと導かれます。
壁の塗装について聞かれることも多いですが、シックハウスの原因となる揮発性有機化合物(トルエン・キシレン・ホルムアルデヒドなど)を一切含まない米国製塗料なので、臭いはほとんどありません。日本で濃緑色を選ぶと抹茶色になってしまいがちですが、「和風でなく、濃いけど明るい緑」を豊富な色見本の中からお施主様と一緒に選択しました。緑を選んだ理由は、狭小敷地だと庭が無く緑が少ないので、「自然を想起させる色としての緑」という考えもありました。